過換気症候群の患者が来院したときの歯科口腔外科的処置
過換気症候群は発作的に過呼吸を起こすことによって全身的に多彩な症状を起こす機能疾患である。(原因)心因的な因子として不安、緊張、恐怖感、興奮などがある。身体的な因子として疲労、温冷刺激、飲酒、激しい運動などがある。身体的因子に身体的な因子が加わると発生することが多い。歯科領域では局麻剤時の不安、恐怖感、興奮、疼痛により発作を誘発しやすい。情緒不安定で神経症的傾向の強いものに過換気症候群は多いとされている。女性が多く20歳前後に集中している。(発生機序)過換気症候群患者は情緒の変動が過呼吸発作を誘発すると呼吸によってCO2は体外に排出され動脈血PCO2ガス分圧は低下する。そのため呼吸性アルカローシスに陥る。このことより筋肉系、末梢神経系、中枢神経系、循環系に様々な症状を引き起こす。一方β受容体の感受性が亢進していると言われており情緒変動に伴うアドレナリン分泌で交感神経優位になる。正常な人はなぜ起こらないかというと過呼吸発作が起きて動脈血PCO2ガス分圧が起きてもそれに反応して呼吸中枢の興奮が抑えられて、自然に平静な呼吸に戻る生理的フィードバック機構を有している。βー受容体の亢進に対しても正常のカテコールアミンレベルで交感神経症状である。(症状)【呼吸器系】呼吸困難息苦しさ、過呼吸【筋肉系】四肢の筋肉の痙攣、テタニー、筋硬直、【循環器系】頻脈、胸痛、【末梢神経系】知覚異常【中枢神経系】頭痛、めまい、失神(鑑別)神経性ショック。過換気症候群は交感神経優位神経性ショックは迷走神経緊張亢進により抑制症状歯科口腔外科処置においては治療内容を十分説明し患者を安心させることが重要。局麻剤においても表面麻酔で侵襲を少なくする。不安であればセルシンなどの経口も有効。もし発作が起きたなら2~3回呼吸に1回呼吸を止める。呼吸数を減らす。それでも収まらないなら紙袋を患者の口および鼻に覆うようにあて呼気の再吸入をはかる。
2024年08月09日 03:55