舌疾患
①地図状舌・・・舌の表面に白色や黄色白色の縁取りを伴った紅斑が散在性に出現する。紅斑は時に融合して世界地図のような外観を呈する。無症状なことが多いが軽度の刺激痛を伴うこともある。紅斑部では糸状乳頭が欠如あるいは平坦化しており発赤した茸状乳頭が散在する。(所見)紅斑の周辺はやや隆起しており周囲の舌粘膜とは明瞭に境界されている。地図上模様は移動性で日によって位置や形態や大きさを変化させることが多い。(鑑別疾患)紅斑性病変として正中菱形舌炎、前癌病変の紅斑症がある。(好発部位)地図状舌は舌背から舌縁で正中菱形舌炎は舌背正中後方で分界溝より前方。紅斑症は境界明瞭で鮮やかな紅斑が特徴である。地図状舌のような白色の縁取りはみられない。紅斑は固定性で移動することはない。②溝状舌・・・・舌背表面に多数の裂溝がしばしば対称的にみられる。溝の内面は平坦で乳頭の発達は悪い。裂溝に食渣が停滞すると二次的な疼痛が生ずる。(所見)舌背中央を前後に走る深い正中溝とそこから側方に放射線状に広がる小裂溝により葉脈状を呈する。しばしば地図状舌に合併する。舌の裂溝形成にトリソミー21が関与される。
③黒毛舌・・・・舌背は糸状乳頭で被われている。それぞれの糸状乳頭の表面は角化しており、何らかの原因によって角質層の増成や剥落遅延がおこると糸状乳頭の伸張をきたす。その状態の糸状乳頭は毛髪に類似しており毛舌と呼ぶ。そこに細菌の増殖、喫煙によって黄色、褐色になりさらに黒色になり「黒毛舌」という。(原因)ステロイド剤や抗菌薬の服用によっておこる菌交代現象やカンジタ菌による。
➃平滑筋舌・・・・「赤い平な舌」として舌乳頭の萎縮によって舌の平面が平滑となり暗赤色を呈する。平滑舌の原因として鉄欠乏性貧血、悪性貧血、シェーグレン症候群があげられる。(所見)舌糸状乳頭の萎縮がみられ、舌は平滑となり、発赤があって舌苔を伴わない。時に舌尖、舌縁部にびまん性の痛みを伴い、灼熱感、接触痛を訴え、口角炎や口唇亀裂、溝状舌を伴う。舌に病変を認めた場合、皮膚疾患や内臓病変など全身疾患の一つの症状として口腔内に現れることがある。例えば鉄欠乏性貧血は鉄剤投与、悪性貧血はビタミンB12補充療法、シェーグレンは対症療法。(治療)口角糜爛や舌萎縮病変はステロイド軟こう、舌痛にはアズレン含嗽剤投与。
⑤正中菱形舌炎・・・・舌背のの後方中央に菱形の舌乳頭が消失した平滑な赤色粘膜を有する疾患である。壮年の男性に好発。(原因)真菌の感染、鉄分、ビタミン不足、接触アレルギー、喫煙などがあるがカンジタ感染説が有力である。(所見)舌を前方に出すと後方正中に赤みを伴う平滑な部分を認める。自覚症状は乏しいがたまに痛みを伴う。扁平上皮癌の例もある。
⑥舌痛症・・・・40~60代の女性に多い。(好発部位)舌尖、前方舌縁に多い。「ピリピリ、ヒリヒリ」などの自発痛、表在、現局、持続性。(きっかけ)歯科治療の後、マスコミの偏在情報、身近な人の舌癌の話
(特徴)何もすることがない時間、疲労、ストレス、刺激物の摂取は憎悪する。食事や好きなことをするときガムや飴などリラックスすれば減る。下顎隆起がある人、下顎前歯部がストート人。歯科治療後に傷害性咬合になった人。
(鑑別)舌癌、白板症、扁平苔癬
(治療)自律神経変調説により障害性咬合を治す。癌でないことを教える(支持的精神療法)薬物療法
2025年03月29日 02:35