⑫口腔頭頚部癌
頭頚部癌は口腔癌(舌癌、歯肉癌)上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭がん、副鼻腔癌(上顎癌、鼻腔癌)唾液腺癌、甲状腺癌に分かれます。口腔頭頚部癌は全悪性腫瘍のおおよそ5%を占めますが口腔癌、咽頭がんは増加傾向です。ちなみに2024年は8580人です。【原因】アルコールの多飲と喫煙ですが最近では中咽頭がんは約半数がHPVが関係していると言われてます。舌癌は歯などによる慢性機械的刺激が発生にかかわるとされている。【組織】扁平上皮がん【手術療法】局所進行頭頚部癌の手術では腫瘍切除後に組織欠損部を縫合閉鎖できないことが多く、他部位から患者自身の組織(皮弁)を移植して組織欠損の再建を行う必要があります。以前は前胸部など隣接部位から皮弁を有茎性に(栄養血管を切り離さず)採取して移植していましたが現在は腹直筋など離れた部位から皮弁を栄養血管とともに採取し皮弁と頸部の血管を吻合して移植する遊離皮弁が標準的である。頭頚部癌は非清潔術野の手術であり、術後に嚥下障害が起こるため創部感染や肺炎がしばしば問題となります。術後の口腔ケアは標準的な支持療法となります。【頭頚部癌の化学放射線療法(CRT)】頭頚部の癌は扁平上皮癌で放射線感受性が高い癌です。放射線療法にシスプラチンなどの白金製剤を同時併用により生存率が向上することがあきらかになっています。最近は抗EGFR抗体であるセツキシマブ併用CRTも行われます。頭頚部のCRTは口腔咽頭の粘膜炎、皮膚炎、味覚障害、口腔乾燥、嚥下障害などおこることが多く疼痛管理、栄養管理、口腔ケアが必要です。①口腔癌・・・放射線治療の有用性は低く手術が原則。局所進行例では腹直筋皮弁の遊離皮弁による再建が必要です。下顎歯肉癌や口腔底がんなどは下顎骨浸潤のため下顎骨の切除と遊離腓骨皮弁などを用いた骨性再建が必要となります。2021年から腫瘍に伴う広範囲顎骨欠損に対するインプラント治療が保険適応になり再建骨皮弁にインプラントを埋入して咬合再建を図ることができるようになった。上顎歯肉癌では硬口蓋切除が必要となることが多くその場合は口蓋欠損に顎義歯を作り咬合閉鎖が図られます。②上顎洞癌・・・・空洞である上顎洞を原発とするため早期には症状ありません。歯痛、鼻閉、鼻出血、複視、頬部腫脹などの症状があります。治療は手術が基本で多くは硬口蓋切除が行われ進行例では眼球摘出、頬部皮膚切除を要します。多くの場合は放射線療法を併用します。通常の頸静脈的投与によるCRTは完治難しく、顎動脈などの腫瘍栄養血管へのカテーテルを挿入してシスプラチンなどを投与する【超選択的動注化学療法】動注CRTが良い成績を収めている。
2025年09月29日 17:19
