味覚障害と舌痛症
【味覚障害】の原因は①食べ物が口腔内で咀嚼されることにより味味覚が唾液と混じる。味物質が唾液に溶けて味蕾の深部まで運ばれる。③味蕾の味覚受容体からシナプスを経て、延髄の孤束核の神経細胞に伝わる。④孤束核から視床の神経細胞に伝わる。⑤視床から大脳皮質に伝わる。ほとんどの味覚障害はこれらの生理機構が十分に機能しないことが考えられる。咀嚼不足、唾液の分泌低下、味蕾の機能異常である。具体的には味細胞は寿命が短いためビタミンや亜鉛や鉄などの不足による味覚障害が生じやすい。唾液の分泌低下や抗ヒスタミン、抗てんかん薬、βブロッカー、CA拮抗薬、抗コリン薬、抗うつ薬、抗不安薬など薬剤性の口腔乾燥からも起こりやすい。さらに糖尿病性神経障害や中枢神経系の異常も味覚障害に関与している可能性があります。それに対して【舌痛症】hは「口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)」と同じ病態です。「口の中のヒリヒリとした痛みまたはピリピリした不快な異常感覚が1日に2時間以上で3か月以上にわたって連日繰り返し明らかな原因疾患を認めない病態」です。舌痛症の患者さんはしばしば不安やうつを伴っていてこのため睡眠障害を訴えることはありますが痛みで睡眠できないあるいは痛みで目が覚めるということはありません。心理社会的なストレスと密接な関係があることがわかっています。自覚される痛みの性質は持続性で焼けるような(ピリピリ)痛みであったり差すような痛みであったり(ちくちく、ずきずき)と表現される場合もあります。舌の先に多く、下側に多い。口腔乾燥を伴っており、これに伴って味覚障害を伴っている人も少なくありません。口呼吸や唾液の分泌を抑制する薬剤の服用やストレスとの関係があります。口の中が乾燥すると舌や歯肉の粘膜は炎症を起こして痛みを感じるようになります。このような炎症を起こした粘膜は刺激に敏感で辛味や塩味などの味刺激にも過敏になります。舌や歯肉の機械的な刺激にも過敏になって食事がとりにくくなります。男性女性比は1:10で特に閉経後の女性の有病率は12%~18%です。舌痛症患者は味を感じる味蕾が消失しており味蕾に至る細い神経線維が著しく少なくなっていることが示されました。このことも舌に分布する鼓索神経という感覚神経の機能異常を示唆するものです。このように口の中の神経の形態および機能に障害がみられることから「神経障害性疼痛」という神経自体の障害に基づく病変ではないかともいわれています。
2025年10月18日 09:19
