胸腺に潜む未知のT細胞
【胸腺】胸腺の働きを調べるために胸腺を除去する実験を行ったところ除去することによりある機能が失われれば胸腺にどのような機能があるか知ることが出来る。生まれて数時間以内のマウスの胸腺を摘出した後、マウスにマウス白血病ウイルスを注入したところリンパ性白血病が起きるかどうか観察したところ白血病は発生しなかった。ところが出生直後から2~4か月までは問題なかったのにその後は感染症にかかりやすくなり免疫不全により死んでしまった。このことより胸腺は免疫機能にとって不可欠な働きをする臓器だと推測される様になった。そこで胸腺摘出ネズミからはリンパ節や脾臓、末梢血中でもリンパ球が減少していたのでリンパ球は胸腺由来のものの様だった。このリンパ球を「胸腺依存性リンパ球」と名付けられた。【胸腺摘出により自己免疫疾患?】新生時期の胸腺摘出により卵巣炎だけでなく自己免疫甲状腺炎や自己免疫性胃炎(抗胃壁細胞抗体が陽性)などの症状が観察された。【生後3日の胸腺摘出マウスが自己免疫疾患?】生後3日前後にマウスの胸腺を摘出すると自己免疫疾患に似たいくつもの病変(卵巣炎、甲状腺炎、胃炎など)を発生するようになった。しかし免疫をに担っているT細胞は胸腺由来であり胸腺をとってしまえばT細胞も作られなくなるため免疫反応は弱まるはずなのに逆に炎症を伴う自己免疫疾患を起こしてしまった。【T細胞に何らかの変化?】マウス新生児の胸腺摘出によっておこる免疫異常と人自己免疫疾患の発生につながる免疫異常にはT細胞における何らかの変化が考えられた。【胸腺細胞の移植で卵巣炎の予防】生後2日~4日の雌マウスから胸腺を摘出すると卵巣炎を含む臓器特異的な自己免疫疾患を発症した。さらにこの病変は脾細胞を介して別のマウス(同じ系統の幼若のマウスの腹腔)に移すことが出来た。そうすると一週間後に注入された卵巣にもリンパ球が激しく浸潤して卵細胞が破壊されてしまった。このことより胸腺摘出マウスの細胞から卵巣に障害を起こすように働くT細胞を分離し表面形質を突き止めることが出来た。一方正常な生体の雌マウスの脾臓のT細胞または胸腺のT細胞注入することでその病変の発症を防止することが出来た。これとは対照的に出生直後に胸腺摘出を受けたマウスの脾臓やリンパ節の細胞を注入しても発症した。正常な雌マウスに備わっている何らかの機能を持つT細胞が卵巣を破壊する自己免疫疾患を鎮静させた。【自己免疫疾患を抑えるT細胞】胸腺摘出後の自己免疫性卵巣炎は胸腺が失われたところで自己免疫疾患を抑えるようなT細胞の亜集団ものぞかれてしまい残ったT細胞が卵巣を攻撃するようになってくる。しかし胸腺摘出マウスでも免疫抑制するT細胞の亜集団を外部から補えば炎症が起こらなくなる。しかしこのT細胞の亜集団は正常なマウスのものではならない。又正常なマウスでは免疫を抑制するT細胞が末梢にも居続けて炎症を抑えているのであろう。
2026年03月31日 12:16
