①シナプスから見た精神疾患(心を紡ぐ基本素子から考える)
【何故心の病の脳科学か?】脳も体の中の臓器の一種なので、他の臓器から大きな影響を受けている。内分泌や免疫、腸内細菌と精神疾患の関係も注目されている。アルツハイマー病認知症やパーキンソン病の脳を調べてみると病理学的に異常なタンパク質の凝集体がある特定の神経細胞に蓄積し、その結果細胞群が傷害を受け脱落しています。(細胞死)。進行すると脳容積が著明に減少(脳萎縮)していく経過がCTやMRIなどの脳画像法でみられ脳変性疾患にこれらは分類される。一方統合失調症をはじめとする精神疾患の患者さんの脳を調べても異常なタンパク質が蓄積している様子も、神経細胞の顕著な細胞死もみられません。【シナプスが私たちの心を制御している】人の脳は約1000億個もの神経細胞がつながりあった巨大なネットワークで情報のやり取りは電気信号で行われます。神経細胞には信号を受ける樹状突起と信号を出力する軸索(神経発火)という2種類の突起があります。しかし軸索と樹状突起の間には、わずかな隙間がありこのつなぎ目のことをシナプスと呼びます。シナプス前細胞から神経伝達物質がシナプスへ分泌される。神経伝達物質はシナプス後細胞により受け取られこの化学信号は再び電気信号へ変換される。グルタミン酸は神経細胞を興奮させる神経伝達物質でGABAは落ち着かせる神経伝達物質である。グルタミン酸とGABAのバランスが興奮側に傾き、膜電位がある大きさ(閾値)を超えると膜電位はさらに上昇し軸索に電気パルスを出力します。これを「神経発火」と呼びます。幸福感を構成する神経伝達物質はドーパミン、セロトニン、オキシトシン、ニコチンなどがあり神経発火の起こりやすさを調整するので神経修飾物質と呼ばれている。【シナプス・デモクラシー(神経の発火は多数決で決まる】神経発火の直接な誘因となる物質はグルタミン酸なので電気信号が軸索を伝わってくるとシナプス前細胞からグルタミン酸が放出されシナプス後細胞にある受容体がグルタミン酸を受け取ると細胞外にあったNA+が細胞内に流れ込むと電位が+に押し上げられる。GABAはーイオンを流し込みます。グルタミン酸がわずかの時間で入ることで膜電位は閾値に到達でき神経発火が誘発される。【シナプスの強さは刻刻と変化している】一つの細胞は1万個ほどの興奮性シナプスがあると言われています。多くの興奮性シナプスはスパインと呼ばれる樹状突起上の微細な構造物上にシナプスを形成します。スパインは電気回路の配線のように安定したものではなくしばしば変化することが知られてます。例えばシナプスが大きくなると発火に対して大きな効果を持ちスパインが小さくなるとシナプスの効果は小さくなります。(シナプス可塑性)【統合失調症ではシナプスが独裁主義になる】統合失調症の発症に関する遺伝子はシナプスで働くものが多く中でもスパインで働く遺伝子が多い。スパインの数が少ないという報告があります。統合失調症の発症に関する遺伝子の中でもDISK1とSETD1などは発症に対する影響度が多きいと言われておりこれらの遺伝子が働きにくくなる変異があるとそのような変異がない場合に比べて統合失調症の発症の確率はけた違いに高くなります。本来なら多数の神経細胞から同時に信号入力がないと発火しないという民主主義な仕組みなのに統合失調症ではスパインの密度が変わることで少数の神経細胞からの信号入力だけで発火してしまう独裁主義に変化してそれが神経回路の調和を乱している説が考えられている。【情報の統合に障害が起きている可能性】脳では複数の神経細胞が同じタイミングで(同期)して発火することで情報を統合すると考えられます(マルチタスク)。しかし脳内の発火のタイミングがずれてしまったりさらに別の記憶を保持している神経細胞群が同期発火して同じ回路で機能的につながってしまったならば(例えばFBI容疑者を追跡いているドラマの記憶を保持している神経細胞群)『今FBIが追跡されているという』妄想が起こってくるのである。【様々な仮説を検証して個別化医療を目指す】最も有名な仮説は「ドーパミンが大脳皮質下という脳領域で過剰に分泌されているという仮説」「GABA作動性神経の活動が弱い説」「酸化ストレスという細胞ダメージにより神経細胞の機能に変調が生じるという酸化ストレス説」これらが複合的に絡み合って病態生理を形成していると考えられてます。(不均一性)(異質性)。現在ではドーパミン受容体に働く拮抗薬です。
2026年09月30日 12:18
