【口腔とは】口腔は空洞器官で第一番目の消化器である。舌、口底、頬粘膜、下顎歯肉、上顎歯肉、硬口蓋、軟口蓋から成り立ち、顔面形態の裏打ちをし咀嚼、嚥下、構音の機能を持つ。以上のことから口腔の形態は機能と審美性に直結しています。
【口腔がんの疫学】口腔がんは口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称です。扁平上皮がん、小唾液腺癌、肉腫、悪性リンパ腫、転移性癌などがあります。発生頻度は扁平上皮がんが最も多く90%です。男女比は3:2と男性が多いです。舌癌が最も多いです。
【口腔がん発がんの原因】飲酒、喫煙、食べ物などの化学刺激、齲歯や義歯のような補綴物による機械的刺激、パピロマウイルス
【口腔がんの特徴】口腔領域では一部の顎骨中心性癌を除いて直接みて触知できるのが特徴。進行の速度が速いことも特徴です。口腔の解剖学的複雑性から隣接組織や骨、筋肉といった深部の臓器に浸潤しやすいことも特徴。
【口腔がんの診断】①口腔がんは無痛性の潰瘍や腫瘤として確認される。視診による診断では粘膜の色調の変化(白斑や紅斑)潰瘍の症状(顆粒状、肉芽様、カリフラワー)などよく見極めることが大切である。NBIを用いた診断のように特定の2波長をあてることにより粘膜下の血管異性を診断し、超早期の癌が発見できるようになりました。最終診断として生検による病理組織学的診断になります。②口腔がんの診断がついた場合は癌の進展範囲、リンパ節転移、遠隔臓器転移、重複がんの精査のための初見査となります。
X線、造影CT、MRIを用いて行います。頸部リンパ節や遠隔転移、重複がんはFDG-PET検査が必要不可欠となります。重複がんは咽頭、食道、胃などは内視鏡検査が必須である。
【口腔がんの治療】切除可能例に対しては手術療法が中心となります。①原発巣切除・・・原発巣の切除方法は病巣の大きさ、浸潤状態、深達度隣接下浸潤臓器によって決定されます。舌癌では部分切除、半側切除、亜全摘、全摘。下顎歯肉癌では辺縁切除、区域切除上顎癌では部分切除、全摘、拡大切除に分類されます。②頸部郭清術・・・原発巣、リンパ節の転移の状態によって郭清範囲を決める。転移の状態によって副神経、内頸静脈、胸鎖乳突筋、顎二腹筋の温存、切除を行います。切除に含める組織においては副神経切断の場合は上肢の挙上障害、内頸静脈切断では顔面浮腫、胸鎖乳突筋切断では頸部絞扼感みられる。③再建手術・・・再建には有茎皮弁、遊離皮弁を行います。現在では遊離皮弁を使用することがほとんどです。軟組織の皮弁は前腕皮弁、腹直筋皮弁、広背筋皮弁、全外側大腿皮弁がある。適正な組織量による再建により良好な顔面形態、摂食、嚥下機能が回復される。下顎骨の切除後の再建は遊離腓骨皮弁、遊離肩甲骨皮弁、遊離腸骨皮弁を用います。骨接合は再建プレートを用います。
【放射線治療】扁平上皮がんの放射線感受性は高いと言われてますが放射線治療のみで根治することは困難で化学療法との併用療法や手術前後の補助療法として行われます。現在では腫瘍周囲の正常組織への放射量を控え、腫瘍への線量を増加させる高精度放射線治療であるIMRT(強度変調治療)が行われるようになった。難治性がンに対しては線源を変えた粒子線による治療効果が報告されホウ素を用いたBNCT(ホウ素中性子補足療法)による治療が開発されてます。
【化学療法】口腔がんに対しての化学療法のみの根治の可能性は低く一般的には再発癌や切除可能な再発癌に対してCDDP(シスプラチン)を併用した放射線療法が用いられている。局所進行がんに対して腫瘍栄養血管に超選択的に化学療法剤を動注し放射線と併用し機能温存や生存成績に良好な成績を収めている。又抗EGFR抗体であるセツキシマブも治療効果が認められている。
2025年11月07日 11:22